チベットで建築可能か
01 April 2014
 
zhangke standardarchitecture - 127 《中国当代建筑》 April 2014
 
 
 
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チベットで建築可能か

『外灘画報2013年7月25日号』は、「中国建築師中堅力量(中国の中堅建築家の力量)」というタイトルのもと、1970年代前後生まれの若手中国人建築家10組12人を紹介している。特集は以下のような言葉ごはじまつている。「中国における建設量が世界の半分を占める現在、しかし国内の主要な建築の多くは未だにアメリカ·ヨーロッパ·日本の建築家によって設計それている。ときおり目にする中国の建築家といえば、イオ·ミン·ぺイ、張永和、王澍、劉家琨、朱ペイなど数人程度。だが、中国の建築家は決して彼ら数人にとどまらない」。本稿で紹介する張軻は、この特集号において12人の建築家のトップバッターとして登場しており、彼がこの世代の建築家を代表する一人として認識それていることが分かる。

張軻は1970年に安徽省に生まれ、中国最難関の清華大学建築学科に進学。卒業後はアメリカに渡り、ハーバード大学で修士课程を修了している。その後はアメリカのいくつかの建築事務所で働き、2001年に《北京明城壁遺跡公園》コンペに勝利したことをきっかけに、中国へ帰国して「標準営造(スタンダード·アーキテクチュア)」を設立している。

スタンダード·アーキテクチュアの初期の代表作には、竹ルーバーのファサードが特徴的な《陽朔小街坊》(2005)、5つの中庭式の建物が寄り添ったような《石頭院》(2007)が挙げられる。いずれの作品も現地の材料を建物の主要な部分に使用しており、派手さはないが悠然とした端正な佇まいである。

張軻が国際的に注目されるようになったのは、2008年にはじまるいわゆる「チベットツリーズ」のプロジェクト群からであろう。チベット自治区の東南部、標高3,000mを超える場所を流れるヤルツアンポ川沿いに位置する林芝県一带に、観光開発を手がけるクライアントの依賴を受けて、計12棟ほどの小規模な建築物を設計している。現在までに完成したのは《ナムチャバルワビジターセンター》(2009)ゃ《チベット大渓谷芸術館》(2011)などの6つの建物であり、その他についても目下施工中、計画中となっている。   

チベットで完成しているプロジェクトでは、外壁材や内装仕上げ、窓枠などに現地の材料が使用され、またチベットの族伝統的な構法を応用しつつ、現地の職人の手によって施工されている。単純な幾何学の組み合わせでできたボリュームガ、敷地周辺に自然に転がつているような石材で仕上げられており、遠くから見ると、建物が周辺の環境に溶け込んでいるのがよく分かる。どこからが建物でどこからが地面なのか判别がつかないような印象だ。張軻みずからが時間をかけて現地を歩きまわって敷地選びから設計は始められたというから、チベットのもつ壮大な自然的、地理的、文化的コンテクストをデザインの背景として十分に消化したのだろう。そのコンテクストの中に小さな建物を埋め込んでいくという手法は成功し、「ヴェローナ国際石建築大賞」(2011年度)で表彰されるなど、国内外で高い評価を得ている。

筆者はスタンダード·アーキテクチュアの事務所を訪ねたことがある。1950年代に建てられた紅レンガ造の建物をリノベーションしたものだ。現在のスタッフは約30人程度であり、その半分はイタリア·スペイン·ポルトガル·デンマーク·日本などの外国人である。設立当初は張軻を含め4人のパートナー制であったのだが、現在は張軻が単独で代表である。

事務所人り口付近には、進行中のものを含めてさまざまなプロジェクトの模型がところ狭しと並べられていて、スタディに模型をあまり使わない中国の事務所とは印象が異なる。模型製作専門のスタッフもいるそうだ。現在進行中のプロジェクトは、9㎡の胡同のリノベーションからチベットの都市計画、プロダクトなど多样である。《ノバルティス上海センター》といつた国際的なプロジェクトもある。

彼らの事務所名である「標準営造」の「営造」とは、明治以降「建築」という言葉日本から輸入されるまで、中国においては「建築」のような意味で使われていた言葉である。しかし実は「営造」とは、建物を建てることのみに限らず、道具の制作や、更には雰囲気や気配を醸出すといった抽象的な概念を含んだ包括的な言葉でもある。一方、「標準」という言葉には、「自身の信じるものを基準とし、すでにある標準を疑いそれに挑戦していく」(張軻)という意思が込められている。「標準」と「営造」を組み合わせた事務所名は、都市·建築·内装·家具·プロダクトとスケールを横断し、更にはそこに漂う空気感までも含めて思考の对象とすること、そして自らの基準を信賴しつつ既成概念に挑戦していくこと、そのような彼らのデザインに对する態度が声高に宣言されているのだと考えられる。

張軻にとって上の世代にあたる王澍が2012年にプリツカー賞を受賞したことで、中国における現代建築は「ポスト·プリツカー时代」とも言える新たな时代に人った。建築評論家の周榕(ジョウ·ロン)が指摘するように、欧米からの「他者の視線」を通じて価值判断をする时代が終わり、中国自身の文明を基礎とした新たな価值体系を構築するという根本的なパラダイムシフトが求められている。文化大革命期に生まれ、改革開放政策とグローバリゼーションによって急速な国際化と経済発展の中で育った張軻と、彼に代表される中堅世代の中国人建築家たさには、こうした歴史的使命が宿命的に背負わされている。

(青山周平/清華大学)


《チベット大渓谷芸術館》チベット,2011 
チベットの雄大な自然に囲まれた敷地に建つアートセンター。ランダムな多角形グリツドによる平面構成、現地の材料·構法によるファサードが特徴。遠方からは、山裾に自然に散らばる石ころのように見える。   

《ニヤン川ビジターセンター》チベット,2009 
周辺地域観光の起点となる施設。チケットオフィス·更衣室·トイレ·管理室の4つの不定形なボリュームで構成される。重厚な組積壁·木梁·アガ土による防水層など、チベットの伝統的構法が応用されている。   

《ナムチャバルワ·ビジターセンター》チベット, 2009 
観光に関するさまな機能をもつビヅターセンター。雄大な山々に囲まれ、ヤルツァンポ川を見下ろす絕好の敷地に建つ。現地の石材·構法を用いた構造体が、そのまま外壁および内装の仕上げとなり、周辺の環境に溶け込む。  

《蘇州“岸”クラブハウス》蘇州,2007
新たに開発された住宅区内にあるクラブハウス。ジグザグに一筆畫きされた長さ约500mの壁面によって、大小異なる13の中庭的空间が生まれ、建築·庭·水·橋といった蘇州庭園の伝統要素が再解釈されている。 

《石頭院》成都,2007 
成都近郊の山麓に位置する茶室。5つの不定形なボリュームガ寄り添って配置され、ボリューム間の隙間は通り抜けできる路地空間となっている。天窓はガラスのない部分もあり、室内外は極めて曖昧に分節されている。